既婚のM男性や、恋人のいるM男性の多くは、「ああ、自分のパートナーが責めてくれたらどんなにいいだろう」と心密かに思っていることでしょう。でも、実際にはなかなか実現しなくて、結局最後はこっそりSMクラブへ行って女王様に鞭打っていただくということになるケースが多いことと思います。
M男性の夢を実現するためには、どうしてもパートナーに自分がマゾヒスト(サブミッシブ)であるということを告白(カミングアウト)しなければなりません。でも、これはM男性にとってかなり高いハードルです。なぜならば、パートナーに冷たく拒否されたり、軽蔑されたり、場合によっては離婚などということもあり得ると思えるからです。でも、カミングアウトしなければ夢は実現しないのです。
カミングアウトするならば、少しでも性交、いや、成功する確率を上げたいものです。
私は、カミングアウトを成功させるには、次の4つのポイントが重要だと考えています。
①できる限り変態的イメージを抱かせないようにする。
いきなり「ぼくはMだから縛ってほしい」とか、「ムチで打ってください」なんて迫ったら、普通は引きます。できるだけソフトなこと、普通な性行為からあまり逸脱しないことから話をしていくのがいいと思います。道具などもいきなり初めから見せるのはあまりおすすめできません。
②自分中心にならないこと。パートナーのメリットを考えること。
ただ「責めてほしい」というのは自分のことしか考えていません。自分に奉仕しろと言っているのと同じです。男性を責めて初めから楽しいと思ってくれるパートナーはきわめて希です。パートナーのメリットを考えましょう。責めてもらいたいことは控えめに伝えて、パートナーに奉仕することを強調しましょう。女性にとっては、責められたいMよりも、奉仕したいMの方が受け入れやすいのです。
③少しずつ、少しずつ。
いきなり本格的なSMになんて夢にも思わない方がいいでしょう。初めはちょっと積極的になってくれたり、面白がってくれたりすればそれでいいつもりで。お互いの関係ができれば、時間と共にだんだん本格的なプレイへと進んでいくはずです。
④「要求」でなく「お願い」というスタンスで。
そもそも要求すること自体がMという立場との矛盾でしょう。言うことを聞いてくれたとしても後々いいことはないと思います。要求されてそれに応えるという立場は、基本的に心地よくないものです。拒否の気持ちがより働きやすくなります。
具体的に、カミングアウトの言葉・展開を考えてみます。
あくまでひとつの例で、だれでもこういう形がうまくいくとは限りません。
いつものメイクラブの前、明かりを落とした後、ちょっと改まって話を聞いてほしいとパートナーの横に座ります。
「ぼく、セックスでは、どちらかというと君に奉仕する感じが好きなんだ。君がたくさん感じてくれるとすごくうれしい。だからどんどんぼくに指示を出してほしいんだ。ぼくは君が言うとおりにするよ。ぼく、ちょっとMなところがあるんだよね。ねえ、ぼくにご奉仕させて。」
ずいぶんとまあおとなしい内容だと思われるでしょう。実際そうですね。
そして、その後のメイクラブでは、パートナーをソファに掛けさせて、その前にひざまずいての口唇奉仕をパートナーが満足するまで行います。パートナーが要求しなければ挿入行為はなしでもいい覚悟で。サービスでワイングラスなどを持ってくるのも喜ばれるでしょう。
回数を重ねるうちに、パートナーは口唇奉仕に満足しながら、男性がひざまずいて奉仕するという立場を望んでいるということを理解し、これを受け入れるようになることでしょう。こういうものならMを認め、受け入れてもいいという気持ちになってくれれば、あとは無理さえしなければいい方向に転がっていくはずです。
男性の側は、女性の反応を見ながら、少しずつ責めを女性にお願いしていきます。
たとえば下手だったら髪の毛を引っ張ってもらうとか、ひっかいてもらうとかもいいです。始める前に四つん這いになって挨拶をするという儀式を入れてもいいかもしれません。
頃合いを見計らって、ムチを手渡し、「下手だったら遠慮なくこれで叩いてください。」とお願いしてみるといいと思います。こういうきっかけができるとムチを使ったプレイをだんだん導入できるようになってきます。
たぶん気持ちのこもった奉仕を何度か行っていれば、パートナーの方から「あなたはどうしてほしいの?」と聞いてくるでしょう。そこまで行ったら、だんだん自分の望むプレイを紹介していくことができます。
でも、あくまでパートナーの気持ちを大切にして、いやだというものは無理に求めないようにしましょう。そのときは拒否しても、もっと関係が進んだ時に乗り気になってくれるということもあり得るのです。
女性は男性が考えるよりも柔軟性があり、相手次第ではいろいろに変わってくれます。そのためには男性側は女性の気持ちを大切にしていくことだと思います。
例をひとつあげてみましたが、あくまでこれは例です。夫婦、カップル次第でいろいろな形が考えられるでしょう。
でも、おそらく共通しているのは「ソフトに」「焦らずに」ということではないかと思います。